@tsuburetaPotato

煮崩れしにくいタイプの同胞が奴等に一矢報いた。シチューの具として長時間煮込まれ、息も絶え絶えな状態で微かに残る最後の力を振り絞り、奴の口内から上顎に張り付いたのだ。奴は自ら同胞に加えた熱で火傷を負った。因果応報とはこの事だ。ざまあみろ。私は同胞の死を悲しむ事も忘れて快哉を叫んだ。

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我々の種族は”煮崩れしやすいタイプ”と”煮崩れしにくいタイプ”の二つに大別される。潰されるのは主に前者だ。食卓に上がる頃には粉々になっている。潰される事無く煮込み料理に使われる場合もあるが、前述の”煮崩れ”により、悲惨な最期を遂げる。原形を保ったまま死を迎える事すら叶わないのだ。

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「ジャガイモジャガジャガ五ジャガジャガ合わせてジャガジャガ十ジャガジャガ(じゃがいもじゃがじゃがごじゃがじゃがあわせてじゃがじゃがじゅじゃがじゃが)」これは私が丸一日かけて開発した早口言葉である。手前味噌ながら中々の完成度だと思う。これを奴等に覚えさせ、舌を噛ませて間接的に殺す。

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同胞がカレーの中で一晩寝かされてしまった。全身の裁断及び煮沸という拷問じみた仕打ちを持ち前の精神力で乗り切った彼は、その後、残されたカレーの中に放置された。満身創痍の体に刺激性の香辛料が染み込んでいく。果てのない疼痛に苦しみながら彼は衰弱死した。夏はカレーの季節。悲劇は繰り返す。

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毎日暑すぎる。いくら冷暗所とはいえ、この時期は地獄だ。冷蔵庫に入りたい。だが困ったことに我々は常温保存が可能な種族であり、少々放置した所で腐敗しない。便利な保存食だ。自分が奴等にとって都合のいい存在でしかない事に腹が立つ。怒りと暑さによる内外からの熱で自ら蒸しイモになってしまう。

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同胞がポテトグラタンにされてしまった。逃げ場のない密室で溶けたチーズとホワイトソースに密着され、嗚咽しながら焼かれ死んだ。粘質的な感触と乳製品特有の生臭さが体中に纏わり付き、彼女達を心身ともに陵辱した。耐熱皿から溢れた涙が天板に落ちて蒸発し、オーブンの中を深い絶望で満たしていた。

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「塩コショウで味付けをするな!やめろ!」同胞の断末魔は油が跳ねる音に掻き消された。彼はフライパンの中で絶叫し、慟哭し、恐悦し、絶倒し、感動し、解脱し、そして死んだ。調味料と共に焼かれた者の末路だ。刺激物と被加熱の相乗効果がもたらす常軌を逸した激痛が、芋一つを発狂に追い込んだのだ。

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同胞が高速で剥かれていく。奴等はピーラーを駆使して効率的に殺害を行うようになった。短冊状に削ぎ落とされた皮膚の断片が空中を舞う。それらは涙と血で悲しく光っているように見える。殺害に伴う負担が軽減され、その結果として殺害自体の重み、延いては殺害で失われる命の重みが軽減されてしまう。

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同胞がスタンプにされてしまった。我々の中で特に輪郭が真円に近い者、数名を対象に”工作”は執行された。彼らは両断されたのち、断面をナイフで削られ、毒々しい塗料で汚染され、そして使用される。何度も画用紙に押し当てられ、食物としてのアイデンティティを破壊される屈辱は想像するに余りある。

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私の故郷に勇敢な戦士がいた。彼は過酷な鍛錬の末、可食部に高濃度のソラニンを蓄えた。自らの命と引き換えに奴等を毒殺しようとしたのだ。調理場へ向かう途中、彼は残された同胞に向けてこう告げた。「待っていろ。俺が必ず皆の仇を取る」その後、彼は電子レンジで加熱されすぎて爆発し、廃棄された。